米国の大手IT企業アップルが、自社の音声認識機能「Siri(シリ)」に関連するプライバシー侵害の集団訴訟で、9500万ドル(約150億円)の和解金を支払うことで合意しました。カリフォルニア州の連邦地裁に提出された和解案によると、対象となる利用者は、2014年9月から2024年12月の間にSiri対応端末を所有・購入した米国内在住者です。
この和解案が承認されれば、対象者には端末1台につき最大20ドル(約3100円)が支払われる見通しです。
訴訟の背景:意図せぬ録音とプライバシー侵害
訴訟は2019年に始まりました。原告は、Siriが利用者の意図に反して起動し、個人的な会話を無断で録音していたと主張。さらに、アップルがこの音声データを委託業者に送信し、内容を分析していたことも問題視されました。
アップルはこれに対し、「Siriを使った会話の精度向上が目的であり、不正行為はなかった」と説明。あくまでSiriの性能向上のためのデータ収集だと主張しましたが、利用者の許可なく行われていたことが批判の的となりました。
対象者と和解金の内容
和解案は、カリフォルニア州の連邦地裁に2024年12月31日付で提出されています。対象となるのは、以下の条件を満たす米国在住者です。
• 期間:2014年9月から2024年12月の間
• 端末:Siri対応の「iPhone」などの所有者・購入者
和解が承認されると、対象者は端末1台当たり最大20ドルを受け取れる可能性があります。ただし、最終的な金額は請求者数や和解金の分配方法によって変動する見込みです。
Siriのプライバシー問題が浮き彫りに
Siriは、音声アシスタントとして日常生活を便利にする一方で、プライバシー保護に関する課題を浮き彫りにしました。原告によると、Siriが意図せず起動するケースが頻発し、プライベートな会話が録音され、アップルや委託業者に送信されていたとのことです。これが、プライバシー侵害として法的問題に発展しました。
アップルの対応と今後の展望
今回の和解により、アップルはプライバシー侵害の責任を一定程度認めた形となりましたが、同社は「不正行為はなかった」との立場を崩していません。一方で、同様の問題が再発しないよう、今後のプライバシー保護対策や音声データの取り扱い方針に注目が集まっています。
また、Siriのような音声認識技術は、AI技術の進化に欠かせない存在ですが、利用者の信頼を得るためには、透明性や情報管理の適切性が重要となるでしょう。
今後の利用者への影響
今回の和解は、米国におけるプライバシー権の重要性を再認識させるものとなりました。利用者は、自分のデータがどのように扱われているのかを知る権利がある一方、企業側にも適切な情報開示が求められます。
Siriの利便性を享受しながら、プライバシー保護のバランスをどのように取っていくのか――アップルの今後の動向が注目されます。