グリム童話に収められた「ラプンツェル」とディズニーの映画『塔の上のラプンツェル』は、同じ物語をベースにしていますが、内容には大きな違いがあります。以下では、両者の違いを比較しながら解説していきます。
- ラプンツェルの生い立ち
- グリム童話版
ラプンツェルは裕福ではない夫婦の娘です。母親が妊娠中に、隣人である魔女の庭にあるラプンツェル(食用植物)を強く欲し、父親が盗んでしまったことが原因で、魔女に娘を差し出すことになります。ラプンツェルは生まれてすぐに魔女に奪われ、塔に閉じ込められる運命となりました。
ディズニー版
ラプンツェルは生まれつき魔法の髪を持っており、その髪は癒しの力を持っています。彼女は王と王妃の娘ですが、魔女ゴーテルに誘拐され、その髪の魔力を利用するために塔に閉じ込められています。魔法の花から得た力が彼女の髪に宿っているため、ゴーテルはラプンツェルを手放すことができないという設定です。
- ラプンツェルの髪
- グリム童話版
ラプンツェルの髪は非常に長く、王子が彼女の塔を登るために使われますが、魔法の力を持っているわけではありません。物語の後半で魔女に髪を切り落とされ、彼女は荒野に追放されてしまいます。 - ディズニー版
ラプンツェルの髪は魔法の力を持っており、癒しや若返りの力があります。しかし、その髪を切ると、力が失われ普通の髪になるという設定です。物語のクライマックスでラプンツェルは自らの髪を犠牲にして、魔女の支配から解放されます。
- 王子(フリン・ライダー)との関係
- グリム童話版
物語では王子がラプンツェルの塔に偶然出会い、彼女と恋に落ちます。しかし、魔女に見つかり、王子は塔から突き落とされてしまい、茨の中に落ちて目が見えなくなります。盲目の王子はラプンツェルを探してさまよい、最終的に彼女の涙で癒されるという結末になります。 - ディズニー版
フリン・ライダーは王子ではなく、泥棒として登場します。彼はラプンツェルの塔に隠れるために入り込み、彼女との冒険を通して心を変え、最終的に彼女の運命を助ける存在となります。ディズニー版では、盲目になる場面はありませんが、フリンは魔女に刺されて瀕死の状態になります。ラプンツェルの魔法の髪が切られると彼女は力を失いますが、彼の命は愛の力によって救われます。
- 結末
- グリム童話版
ラプンツェルは荒野で双子を産み、王子と再会します。ラプンツェルの涙が王子の目を癒し、二人は幸せに暮らすという結末です。物語には苦難と救済が描かれており、より現実的な苦悩がテーマとなっています。 - ディズニー版
ディズニーの物語は、よりハッピーエンドに向けて描かれています。ラプンツェルは自身の王家の身分を取り戻し、フリン・ライダーと結ばれます。全体的に冒険とコメディ要素が強く、魔女ゴーテルは力を失って消滅するなど、子供向けに適した明るい結末となっています。
- 魔女の役割
- グリム童話版
魔女は非常に恐ろしい存在として描かれており、ラプンツェルを閉じ込め、王子を傷つける冷酷な存在です。物語における魔女の動機は単にラプンツェルを支配し続けることです。 - ディズニー版
魔女ゴーテルはラプンツェルの髪の魔力を永遠に利用し、若さを保つために彼女を監禁しています。ディズニー版では、魔女のキャラクターがややコミカルな要素も含まれており、彼女の動機がラプンツェルの髪の魔力に基づくことで、より明確になっています。
まとめ
グリム童話の「ラプンツェル」は、より暗く、現実的な苦難を描いていますが、ディズニーの『塔の上のラプンツェル』は、冒険とロマンス、そしてコミカルな要素が加わった明るい物語に仕上がっています。グリム童話のテーマは道徳的な教訓や運命に対する試練が強調されていますが、ディズニー版では自己発見や家族の絆がテーマとなっており、視聴者により親しみやすい作品となっています。