バードストライクは、航空機が飛行中に鳥と衝突する現象を指します。
この現象は、航空業界における重要な安全問題の一つであり、航空機の運航や乗客の安全に影響を及ぼすことがあります。
特に離陸や着陸時などの低高度飛行中に発生しやすく、鳥が多く集まる空港周辺や渡り鳥の通過ルートではリスクが高まります。
バードストライクの発生状況と要因
主な発生状況：
1. 低高度飛行中：
飛行機の離陸や着陸時（高度3,000フィート以下）に多く発生します。これは、鳥が通常この高さで活動しているためです。
2. 空港周辺：
空港近辺には農地や湿地、湖など鳥の餌場が多いことから、鳥が集まりやすい環境となっています。
3. 季節の影響：
渡り鳥の季節（春と秋）には、特定のルートを通る鳥が大量に移動するため、バードストライクのリスクが高まります。
主な要因：
• 鳥の大きさ：小型の鳥が多いものの、大型の鳥（カナダガンやワシなど）との衝突は損傷が大きい。
• 鳥の群れ：単体よりも複数の鳥との衝突（群れの場合）は、損害が拡大しやすい。
バードストライクの影響
1. エンジンの損傷
バードストライクで最も重大な影響を及ぼすのがエンジンです。
ジェットエンジンに鳥が吸い込まれることで、エンジン内部のファンブレードが破損し、動作が停止する可能性があります。
双発エンジンの場合、両方のエンジンが停止すると緊急着陸が必要になります。
2. コックピットや機体の破損
衝突の衝撃でコックピットの窓が割れる、または機体の一部に穴が開くことがあります。
これにより、航空機の操縦や構造が大きく影響を受ける場合があります。
3. 緊急着陸や遅延
重大な損傷が発生した場合、パイロットは直ちに緊急着陸を行う必要があります。
これにより、フライトの遅延や運航スケジュールへの影響も生じます。
有名な事例：ハドソン川の奇跡
2009年、USエアウェイズ1549便が離陸直後にカナダガンの群れと衝突し、両方のエンジンが停止しました。
機長の冷静な判断により、航空機はハドソン川に緊急着水し、乗員乗客155人全員が無事に救助されました。
この事例は、バードストライクのリスクを広く知らしめるきっかけとなりました。
バードストライクの対策
航空業界では、バードストライクのリスクを最小限に抑えるため、以下の対策が実施されています。
1. 空港周辺での鳥の管理
• 追い払い：鳥を空港周辺から遠ざけるため、猛禽類の鳴き声や爆音装置を使用。
• 環境管理：鳥の餌場や巣を取り除き、空港周辺を鳥にとって不快な環境にする。
2. 技術的な予防策
• 鳥検知レーダー：空港周辺で鳥の群れを追跡し、航空機の飛行経路を調整。
• 航空機の設計強化：鳥との衝突を想定し、エンジンやコックピット窓の耐久性を向上。
3. パイロットへの訓練
• バードストライク発生時の緊急対処法やエンジン停止時の操縦技術を訓練。
バードストライクの統計
• 年間発生件数：世界中で年間約13,000件以上（米国FAA調査）。
• 最も衝突が多い鳥の種類：ハト、カラス、ガチョウなど。
• 致命的事故の割合：バードストライクによる航空事故は比較的少なく、航空業界全体の安全性は高い。
まとめ
バードストライクは完全に防ぐことは難しいものの、航空業界は最新技術と環境管理を駆使してリスクを最小限に抑えています。
空港周辺での管理や航空機の設計強化、パイロット訓練がその鍵となっています。
乗客としては、バードストライクが発生しても航空機が安全に対応できる体制が整っていることを理解し、安心してフライトを利用できるでしょう。
